ピアノと私
ピアノ・・・まったくの初心者ではない。
小学校2年のときに近所のピアノ教室に通い始めた。
自宅にあった、誰かのお下がりのトイピアノで楽しく遊んでいたのを見て
どうせなら、本物のピアノ、と親は思ったらしい。
いつのまにか、自宅にアプライトピアノがやってきた。
6年くらい通った。ピアノを習ってる同級生たちと比べて
進み方は遅かったし、下手だったと思う。
自宅のアプライトピアノの響きはとても好きだったけれど、私が弾く音はなんだか乱暴で、ただ音が並んでいるだけのような気がした。
同じ練習曲も、ほかの子が弾くとステキなのに。なんでだろう、私だけ粗雑なのだ。
お友達はみな上手、と感じていた。
ちっとも練習をしないので、なかなか先に進まなかった。
けれども、不思議とピアノをやめたいとは思わなかった。
しかし親は、いつも「やめたくないなら、ちゃんと練習をしたらどうなのか」とイラついていた。
中学生になってからは、ますます練習しないので、2年生のときに辞めさせられた。
6年もならっていて、何も弾けなかった。
でも、いつかまたピアノを弾こうと思っていた。
自宅のピアノは、自分のピアノだと思っていた。いつかまた、弾けるときが来ると思っていた。
あるとき、家からピアノが消えていた。
邪魔だから、と親が処分したのだ。
捨てたのか売ったのか、私は知らない。今も知らない。
私のピアノだと思っていたが、親はそうは思っていなかったのだろう。
好きだった。あのピアノの音がずっと好きだった。あのピアノの響きが最初から好きだった。お友達の家にあるどのピアノより、自分の家にあるピアノの音が好きだった。ピアノはへたくそだったけれど(笑)いつか、ちゃんと弾きたかった。弾けると思っていた。
私のピアノを、どうして私に何も言わずに処分してしまったの?
でも、何を言っても、もうピアノはなかった。
「お前のピアノじゃない」とはっきり言われた。
信じられなかった。悲しかった。泣いた。でも、
どうにもならなかった。
あれから、 ずいぶん時間が経ってしまった。
ついにまた、ピアノを習う。
なんと39年ぶり!?(笑・面倒なので公称40年ぶり・笑)
すごい、とおもったのは、それでもやっぱり完全な初心者ではなかったこと。
譜が読めること。ずっとずっと使っていなかった「なにか」が、
ちゃんとなくならずに、私の中に存在し続けていたこと。(つづく)