好きな曲でレッスン・・・・にためらう
大人向けのピアノレッスンをしてくれるところを探しているとき、
「弾きたい曲を中心にレッスン」とうたっているお教室が目立つように思えた。
今回、お教室探しをするにあたって、そのようなところは避けた。
別に弾きたい曲がないわけではないのだが・・・
社会人になって、自分のために少しお金を使えるようになったとき、やはり聴く側でなく、音楽にふれていたくて敷居が低かったのがおそらく理由の大半なのだろうと思うが、エレクトーン教室(個人レッスン)にしばらく通っていた。
難易度別の楽譜があって、その中から好きな曲、弾いてみたい曲を選んでレッスンを受けるようになっていた。演奏に必要な知識や奏法はその中に盛り込まれていたように思う。
一番最初はコードが2つだか3つのシンプルなメロディーラインの曲からはじまって、少しずつコードを増やしたり、ちょっとしたアレンジ弾きのパターンを教わったりしながら、だんだん複雑というか、華やかな演出というか、難易度をあげていくシステムだったと思う。
2,3年は続けていたのかな?
でも、ずっと続けていくことに疑問をもってしまったというか、飽きてしまった。
子供向けのエレクトーンとは違うシステムだったのだと思う。受けたいと思ったわけではなかったが、ヤマハにあった(今もあると思う)グレード試験の受験勧奨はまったくなかった。
とにかく「好きな曲を楽しく弾こう」という目的だったのだと思う。
系統だった教本を使うこともなかった。
難易度別になっている楽譜(ひとつに1曲か2曲載っていて、そのたび購入する)は、最高難度もそれほど難しくなかったので、苦労することはなかった。
つまり、そこからはあまり学ぶことがなくなってしまったのだ。
先生は、「このなかに楽譜がなくても、好きな曲があればリクエストしてください」と言ってくれて、今思えばなんと贅沢なことだろう、オリジナルアレンジ譜を作ってくれるようになった。
先生の手書き譜のコピーでレッスンするようになったのだ。楽譜代は請求されなかった。リクエストした曲で、手ごろな難易度の既存の譜があるときはそのコピーを無料で用意してくれた。
先生に不満はなかったし、むしろアレンジで負担をかけているのではないかと恐縮していた。
時々パーティーとかいう、ちょっとした発表会みたいなのもあり、それはそれで楽しかったし、アンサンブルもさせてもらえて、教室としても飽きないようにずいぶん工夫していたとは思う。アンサンブルのメンバーさんともトラブルはなかったし、一人で弾くのと違って楽しかった。
でも、やめてしまった。
理由はいくつかあったと思う。
エレクトーンという楽器の特性上やむをえないのかもしれないが、楽器に付随している機能が機種ごとに違っていて、演奏の印象は機械の性能に依存するところがあった(と感じた)。
曲によってはそうでないこともあるが、基本的に左足はベースラインを、左手はコードを、右手はメロディーを奏でる。
しかし右手以外は押さえた音がそのまま鳴るわけではなく、左手はコードを押さえると楽器はコード判定をしたうえで、指定されたアルペジオパターンやシンコペーションのパターンを鳴らすし、左足のベース音も連動してベースパターンを鳴らしたりする。
そんな風に楽器が曲をいろいろと盛り上げてくれるわけなんだけど・・・
アルペジオやシンコペーションのパターンも多少は自分なりにプログラムできたりもしたかもしれない。好きな曲を最初から自分でアレンジして演奏(プログラミング?)できたら楽しそうだと思ったが、エレクトーン教室ではそこまで教えてはくれなそうだった。購入した機種には一応メモリー媒体もあり、MIDIを使えばいろいろできそうではあったのだ。先生に質問してみたが、教室で使用している機種の機能をそこまで利用するためのレッスンはない、とのことだった。
ヤマハが新機種を発売すると、レッスン機も新機種になり、購入した機種ではできないことがでてきた。一世代くらいなら差は少なかったが、2世代3世代となってくるとどんどん自分の機種とは異なった機能がついてきて、レッスン機と自宅機の差が感じられるようになっていった。
かといって新機種も、上記のようなプログラミングに関して素人が楽しめる自由度がそれほど増したわけではなく、私にとっては単に音色数やリズムパターン、伴奏パターンが増えている程度にしか感じられず、購入したいという意欲はわかなかった。
(購入したいと思うには高価過ぎた、というべきか。今ならグランドピアノでも買えそうなお値段だったと記憶している)
自作パターン演奏のプログラミングと再生の自由度が高かったら、少しは違っただろうか。
結局、飽きたのだ。
先生がアレンジしてくれる「弾きたい曲」をただ弾くことに飽きてしまった。エレクトーンの「多彩な機能」がただの制約に感じられるようになってしまった。
「弾きたい曲を楽しく」弾いていたはずなのに、と思う。
エレクトーンとピアノは違うかもしれない。楽器自体が違うから。
それに、ピアノで「弾きたい曲を楽しく弾く」ことはけして簡単じゃない、とは思う。もしかしたら一生かかったって、できないかもしれない。
考えすぎなのかもしれないけれど、そんな経験もあって
「大人の方には弾きたい曲(好きな曲)を楽しく弾くレッスンを」
というのをみると「それはもちろん大事なことだけど・・」と感じながらも
なんだか違うかもしれない、と思ってしまうのだ。
大人だけど、進歩は遅いかもしれないけど。
所詮上達は望めないのかもしれないけれど。
身の程知らずかもしれないけれど。
「好きな曲、弾きたい曲で楽しくレッスン」は避けてしまった。